2004年第二四半期のアイドルポップスベスト10(その2)

今回は、1〜3位が年間ベスト10レベルの作品ですね。
この世に5月26日が無かったら...って考えるだけでもゾっとするよ(苦笑)。
下記は解説。

01. 100 MAGIC WORDS(Anne's English Version)/杏さゆり
前回に引き続きトップはグラビアアイドル系の楽曲。
グラドル系は純粋に楽曲イメージだけで勝負できるので、イメージが合えば爆発的に良い曲が生まれやすい。
常識的には1Aの日本語ヴァージョンをピックアップするのでしょうが、私はサウンド的なバランスのよさから英語バージョンをピックアップ。
1Aの日本語ヴァージョンは、つたない日本語感を引き立たせる為のヴォーカルエフェクトを通したがために、いかにもフォーライフ的なインチキ洋楽の印象もってしまいますが、1Bの英語バージョン(本作)はヴォーカルエフェクトを通していないので、シンプルでスタイリッシュなブリティッシュ系ポップスの雰囲気を醸し出すことに成功しています。
もし、はじめからチアリーダーというかアメリカンポップス的イメージでサウンドを構築していたら、トミフェブの様にややもったり気味になっていたでしょう。これではアーティストイメージにそぐわないでしょうから、的確な判断だと思います。
Aメロはトニー・マコウレイばりのバブルガムポップスの王道メロディーライン。これをBメロ以降に上手く繋げていっているので、聴いていて楽しい作品です。
バッキングボーカルも日本語版と英語版では異なるフレーズと、細かい点でも違いがあります。
サビはマワってよし、ロマンスしてよしの、スタンダードナンバーとしてもお勧めの作品。

02. Sugar Time Trip/田村ゆかり
キュートでドリーミー、かつセンスの良い、田村ゆかりサウンドの真骨頂的な作品。
3曲入りシングルの3曲目と一見地味なポジションですが、今回のライブツアーのサブタイトルにもなっている通り、彼女の世界観が総てこの1曲に凝縮していると言っても過言ではない逸品です。
この系統の曲が1曲目となるのがセオリーですが、ややダウナーな曲が採用されたお陰で、この曲はいつもの過剰気味なアレンジからは開放されています。ただ、決してアレンジの手を抜いているわけではなく、適度でバランスのよい、すなわち曲を殺さないアレンジに徹しているため、ドリーミーで飽きの来ない世界が展開されていますね。
植木等はあのジャジーかつファニーなアレンジがあってこそはじめて植木等と言えますが、ゆかりんもまた同様。ユニークなイメージを持ったアーティストは最強ですね。
また、特筆すべきは何といってもBメロ。今年の作品の中では群を抜く出来栄え。スローパートがBメロだということからわかるとおり、質の良いBメロがこの曲の全てです。終始アップテンポな曲中において、オアシスの様な存在であり、何処までもドリーミーな世界が続く。正に夢の世界。
アイドル声優ファンの範疇で止まらず、センスの良いロリータポップスをお探しの方にもお勧めの作品。

03. 永遠ラブリン(∂∇<)/ /小倉優子
1stに続き、志倉千代丸氏が手掛けています。
アニメ・ゲーム界では広く知られるメロディーメイカーで、特に声優アイドル系の楽曲は1980年代末期のフレーバーを感じさせ、切なさが心に染み渡るのが氏の作品の特徴。
作詞・作曲とトータルな面でアイドルポップスを表現できるクリエーターは、つんく♂を除けば、真っ先に氏が思い出されます。
しかしその彼だからこそ、”非常に難易度の高い”アイドルを宛がわれてしまう(笑)。試行錯誤なのか、前作までは声優系⇒王道アイドルのトランスレーションがもう一息だったので、やや歯がゆい印象もありました...
...が、今回は微塵も感じさせない出来栄え。
いままでの彼女のキャラクターを中心に考えた路線から、普遍的なテーマに切り替えたのも曲の輪郭を太くした理由の一つでしょう。
また、過剰なまでのコーラスもとても楽しい。ハモリもあるけどユニゾンもある(笑)。これがこの曲の味になっています。
王道アイドルポップスが聴きたくてたまらない方にも、お勧めの作品。

04. パラダイス/ネイチャJr.
長野発のご当地アイドル「ネイチャJr.」のデビュー曲。
とってもキャッチーでちょっとキュンと切なくなるナンバー。
ZONEのダンサブル系(楽器を持たない系)の楽曲イメージの応用が、地ドル系楽曲のイメージにマッチするパターンが多いのですが、この楽曲もそれに近い。
アレンジは他の地域限定アイドルと同様、やや控えめなダンサブル系。さらにやや南方系なアレンジをスパイスとして加えている。
このサウンドを手掛けたのは「ab:fly」。
あれ?どこかで聞いたことがあるよね?...そう、メロン記念日夏の夜はデインジャー!」のアレンジを担当しているクリエーターズ・ユニットです。アニメファンには下川みくにの楽曲で知られているでしょう。
この辺りの詳細はASAOTOや、BBRKに詳しいですね。
地方発アイドルは気になるけどちょっとマニアックかなあ...と思っている方にも、お勧めの作品。

05. 一生一度のロマンス/スパーク
以降は趣味性が高い楽曲を含みます。
モーニング娘。「好きな先輩」がトニー・マコウレイ風バブルガムポップスの傑作だとしたら、この曲は正にロジャー・クック=ロジャー・グリーナウェイ風のそれであろう。
作曲・編曲は「はたけ」。いやあ、一皮むけましたねえ(苦笑)。
...とまあアレンジは個人的には大好きなものだが、この手のバブルガムポップスが苦手なひとは、ちょっと厳しいかもしれません。
それでも「根!性!」込みで何も考えずに遊べるので、機会があれば聴いたり観たりしてみてください。
もっと評価されていいユニットなんですけど、いかんせんハロプロ外なのが痛い。文化祭でも巨大チワワは見かけたんだけどさ(爆笑)。
頼むからハロプロへ入れてくれ。フットサル要員コミでいいからさ(苦笑)。

06. だって生きてかなくちゃ安倍なつみ
皆様ご存知の曲なので多くは語りません。
個人的にはこの辺りのポジションです。
今期のつんく♂ナンバーは総じて不信だと感じます。前期が素晴らしかっただけに、ちょっと問題あり。
その中でも、イメージ的にアーティストに負けていないのは、この曲でしょう。

07. 恋してるんじゃナイ?/大竹香織 (featuring:小田切理紗)
今回の掘り出し物。
本人はこんな感じです。
アルバム内は元気な曲、理想の高そうな曲が多数を占めていますが、その中でややレトロな曲調を持ってくるあたりががポイント高し。 曲調は細川直美路線から詞のシニカルさを抜いた様な(笑)楽曲ですが。せつなさが声質に合っていますね。作曲者の麻生直希氏がこのCDのプロデューサーとしてクレジットされていることもあるのでしょう。
ローティーンのもつ恋の幼さを十二分に表現している佳曲ですね。
リコーダーが入っていないと萌えないぜ!って方にも、お勧めの作品。

08. 愛してね■もっと/嘉陽愛子
嘉陽愛子avex traxavex modeじゃないんだけど、そこはかとないavex mode臭が漂っているんですよね。
なんでかなあ...とクレジットをみると、アレンジャーに宍戸留美「ナクヨアイドル平成2年」で皆様お馴染み(笑)の安藤高弘氏の名前が...そうか、以前の榎本温子サウンドイメージとダブって聴こえたのは、彼の手腕のお陰だったのですね。とても素晴らしい仕事だと思います(苦笑)。

09. 浪漫 〜MY DEAR BOY〜モーニング娘。
この曲は、1980年代の洋楽(アメリカあるいはカナダ)で元ビッググループのソロ活動モノに同系統の楽曲が多かった様な...イントロの女性のモノローグなんてまさにそう。時代的には「フットルース」とかあの辺りかな。
ネタになったであろう曲もおぼろげながら記憶にあるのですが、残念ながらその手の曲とか産業ロック系の楽曲は大の苦手なので、アーティスト・曲名までは口から出てきません(笑)。
ちなみに、1960〜70年代の曲を参照するとオマージュとかリスペクトとかって表現になるけど、1980年代だとコピーだとかパクリだとかトレースになるんだよねえ。何でだろ?
つーか、まあその程度の作品です。残念ながら。
つーか、とうとう1980年代に手を出したか...ふう。

10. パノラマ-Panorama-水樹奈々
本間昭光の作品。
Buzyの「鯨」と同系統の楽曲だが、「鯨」と比べると、アーティストイメージの安定感を求め、無難にまとめ上げた印象が強い。よって相変わらず、ロック調の激しくも没個性な仕上がりとなってしまったことはやや残念。
「フリースタイル」といった、ガールポップの王道的な歌や、(相棒の飯田高広作の)「Keep your hands in the air」の様な今風のダンサブルなナンバーを楽々と唄いこなせる彼女なだけに、シングルでも肩の力を抜いてGIRLPOPの王道を歩いて欲しかった。
次回に期待。

以上。