つんく♂×秋元康対談の件

ようこそ(笑)。

J-POP花前線
http://www.jpopfront.com/cgi-bin/pinterview.cgi?WEEK=16&CODE=3
に「第14回スペシャル対談 秋元康 VS つんく」というものがアップされています。

対談の最初の方は、お互い腹の探りあいで身の入っていないトークが展開されるんですが(笑)、後半あたりで話は盛り上がり、最後に秋元氏のお決まりの(20:49分頃の)延髄切りが炸裂して終了...って感じの対談ですね。
一部を適当に引用して解説します。

つんく でもね、その頃関西にも“いちごちゃん”っていうのがいたんですよ。、どういう作品で男どもがワーワー騒ぐのかってことを知ってるんだよね。そこがすごい強みだと思うわけ。他にはいないんだもん。例えば、今モーニング娘。のファンで、まだモーニング娘。の面影が残っている時代に、プロデューサーとしてすべての権限を与えられて曲も作れるような人って出ないと思うしね。出来ないと思うよ、たぶん。やっぱりね、受け手側の感覚をある程度わかっていないと、つんくのようなプロデュースは出来ないんじゃないかと思う。熱狂のさせ方という点で、ね。

確かABC(放送)でやってたと思うんですけど、要は同じような番組なんですけどね。地元の女子高生がワーワーッてやってるような…。前半の視聴率はそっちのほうがよかったんですよ。でも僕は「夕ニャン」がオンエアされた当初から見てた。まだ五味岡(たまき)がいましたからね。

五味岡たまきを知っているかどうかで、コアなファンか否かを見分けることが出来た時代の話です。
私が当時住んでいた新潟では、9月後半か10月頃の開始でしたので、彼女はもういなかった様な気がします。
20番台を語れる人はカルトですね。
ハロプロでは誰だろうね?
初期ココナッツ娘(。無し)のメンバーを全員言えるとか...うーむ、あんまし意味無いなあ(苦笑)。
それとご当地アイドルのさきがけ(なのか?)「ICHIGOちゃん」はシングル出てませんでしたっけ?
http://www.yo.rim.or.jp/~mutsu/idol80/artist/ICHIGOchan.html
ありましたね。

秋元 おニャン子クラブのカルトクイズじゃないだからさ(笑)。じゃぁつんくはそのリアルなファンだったということ?

そう。つんくは確か「ミュージックマガジン」のインタビューでは、富川春美のファンでしたね。

秋元 あれはもう勢いなんだよね。音楽の流れとは無関係に、社会的な現象にまでなってしまった勢い。でもモーニング娘。って音楽性がしっかりしてるでしょ? 上手くできているよね。もっていき方も詞も曲も…。だって今の時代の音楽をちゃんと踏まえているもんね。こんなこと言うと怒られちゃうかも知れないけど、おニャン子の曲って、よく聴くとダサいもん(笑)。よくいろんなインタビューで「モーニング娘。おニャン子クラブとやり方が似てますよね」って言われるんだけど、全然違うんだよね。

あらら成長したじゃない、秋元さんも。以前は「平成版おニャン子」って事あるごとに言っていたような気もしますが、それは誰かが勝手に書いたんでしょうかね???...

つんく おニャン子クラブみたいに番組全体で盛り上げるものとは違ってましたから。ま、「ASAYAN」という番組はありますけど、「夕ニャン」とは全然別ですから、音楽ありきじゃないと存在できなかった。それはみんなわかってるハズなんですよ。なかには、おニャン子クラブモーニング娘。から派生したユニットを比較して、このユニットは“ニャンギラス”で、これは“うしろ指さされ組”やなっていう見方をする人もいますけど、企画ありきで存在していないぶん、モーニング娘。では本当の意味での「わたしリカちゃん」や「象さんのスキャンティ」は出来ないんです。

ROMANSはその企画の実験台のようなもの。
でも、モチベーションが上がらなかったのか、時代に合わなかったのか、定かではないですが、企画モノの難しさを改めて痛感しております...つ〜か、私が痛感してどうする(笑)。

秋元 そうだよね。でも原体験としてアイドルの誰かに憧れて面白いなって思う感覚を、つんくは肌で感じてわかってるわけよ。だから「夕ニャン」を見て、どういう曲で自分は楽しくなって

つんく 熱狂ということに関しては、僕の場合、おニャン子クラブもそうだったし、ディスコもそうだし、阪神タイガースも、ジェットコースターも…、全部その対象だったんです。つまり、モーニング娘。は、エキサイティングないろんなものの到達点のミクスチャーなんですよ。だから音楽だけ、見た目だけという、どれか一つだけにこだわって、こんなふうにしたろって思っても出来ないんですよ。

おニャン子以外にも熱狂できるアイドルはいたはず。秋元系だけ見ていたわけではない。それは、その後のつんく♂の発言で遠巻きに説明しています(笑)。

つんく そうですね。失敗テイク大好きだし(笑)。あとテープの空回し。こっちで相談してるフリをして、内緒でテープを回して、ガヤガヤ、キャッキャッ世間話してるような会話を録音しておいて、あとで曲の中にはりつけたりね。だけど、そういうニュアンスの部分はそれとして残しておくけど、それ以外のところはビッチリ直していくんです。結局僕はバンドマンですから、ドラムの音を録るところからスタートしますから、そこはそこでワクワクしながらバンドの音を録っていく。ベースの音もギターもこだわりぬいてオケを作る。で、それが終わるとそのことはすっかり忘れて、彼女たちのある意味ものすごい歌をのせていく。やっぱりこいつらの歌はヘタクソだなぁって思いながら(笑)、キッチリ作り込んだサウンドと合わせていく。そこに今の芸術感だったり快感がある。もちろん、お茶の間に届いたら、そんなことは全然関係なくなるんだけど、自分の中での密かな満足感は残る。

失敗テイク大好きや、テープでのコラージュはビートルズファンならではでしょう。
「やっぱりこいつらの歌はヘタクソだなぁって思いながら(笑)」はアイドルに対する愛情ですね。

つんく そう、あと“Dunk”とか。そういう系。あとは…、山瀬まみには当時かなり夢中でしたね(笑)。

秋元 それはかなりマニアックなんじゃない?

つんく でも歌は上手くて、あぁこの子は売れるんだろうなって思ってましたから。でも最終的にはさほどでもなかったけど。

私も夢中でしたよ、初期の山瀬まみには(苦笑)。今からは想像つかないと思いますけど、歌がとても上手くて、可愛くて、スタイルが爆発していて(笑)...アイドルの終着駅のひとつだと思います。
こーゆー子が形はどうにせよブレイクしたのは、素直に嬉しいですよね。
同じ想いは、個人的には持田かおり(芸名当時)でも経験しています。
80年代末期から90年代前期のアイドルファンは、ネクストブレイクを見極められる感性が自然に培われているのだと思います。

つんく というよりハツラツ系、健康系(笑)。でもその次は石野真子なんですよ。で、その後が伊藤つかさなんですよね。

秋元 それはかなりマニアックだよ、やっぱり。

おいおい、榊原郁恵とか石野真子とか伊藤つかさがマニアックなわけないだろう。

つんく やっぱり最初の「青春のいじわる」ですね。あの曲でくらいきつましたからね。それで曲が売れようが売れまいが、僕には関係ないんですよ。僕の中での針が振り切れていればいいんです。だから、今名前挙げても誰も知らないような人もたくさん、僕の中の針は振れてる。

同感。今売れてる子も売れてない子も、自分の中では一緒。これがなかったらアイドルファンは辞めた方がいい。

秋元 わかるなぁ。売れなくても自分にとってかなりの思い入れがある作品っていっぱいあるからね。そういうのがモノ作りをする立場にいる人間の密かな楽しみでもある。俺なんか結構あるよ。倉田まり子の最後のシングルとか。俺ね、最後のシングル・シリーズは結構やってるのよ。堀ちえみの最後の曲も手がけてるし。でもアイドルってそういうところが面白いわけじゃん。期間限定の一瞬のきらめきみたいなさ。売れるのか売れないのかわからないけど、一瞬はきらめく。そこに賭けるわけだもんね。

とりあえず、秋元も同感できているのねえ(笑)。でも自分自慢になったらダメでしょう。最終シングルは最後の賭けだから、秋元さんみたいな企画屋に任せたくなるもんですよ。
で、結果的に最終シングルとなる。アイドル界のターミネーターですな...ああ表現が古い(笑)。

つんく そう。ルーレットでいえば、36倍の1点に決め打ちする感覚。赤や黒のゾーン(2倍)に賭けちゃダメ。当たればデカいってことをやっておかないとダメなんですよね。バンドはまた別で、4倍とか8倍あたりを狙う賭け方をしなきゃいけないんですけど。そう考えると、アイドルはホントに36分の1くらいの確率じゃないですか?

いいえ、シビアに言えば1/50くらいの確立。つまりシングル50枚買わないと、本当に良い曲にめぐり合えないんですよね。
今は作家が世代交代しているから、1/20程度にはなったかもしれないけどね。

つんく そうですよね。仮に一発当てたとしても、その付近を見ていちゃダメ。
その対局とか、まったく違うところを見てないと…。だから現実的な話でいえば、似たような曲で続けざまにヒットが出ても、自分としては面白くない。

でもあややがその病気にかかりつつあるんですよね。どうするつんく♂

秋元 すごく興奮した事といえばさ、「なんてったってアイドル」を作った時のことを思い出すんだけど…。あれは詞先だったんだけど、自分では世界一大きな穴ボコというか落とし穴を作ったという感覚があって、たくさんの人が落ちてくるところをウキウキして見てたもん(笑)。もう確信犯。

歌謡界全体も穴に落ちちゃっただよ(大苦笑)。

つんく で、そういう暗号をわかってくれるスタッフが何人集まるかが大事なんですよね。いかにその環境を作れるか、が。

つんくが一番苦労しているのは、実はアレンジャーへの発注だったりしていませんか?...昔も今も。

つんく あのね、高校生の頃、秋元さんを知った時からなんかインチキ臭い人やなぁって思ってて…(笑)。でも秋元さんは、それを徹底して本流にしてしまったという気がするんです。スゴイ人やなぁって。だからそのインチキぶりに磨きをかけて、どんどん楽しませてほしいです(笑)。

でもファンとしては「秋元だけにはぶち当たらないでくれ」っていう願いはあるんですけどね(笑)。
決して有終の美にはなりませんから。