ラブコメ

とある件で調べていて気が付いたのですが、漫画系の用語集でラブコメってあまり定義化されていないんですねえ...

ブコメって言葉が広く知られるようになったのは、高校時代の終わり頃かなあ。丁度週刊少年サンデーが絶頂期を迎えていた頃だったか。もう20年も前のことかな。
この頃は少女漫画は殆ど読んでおりませんでしたので、ラブコメという言葉自体の発祥は知りませんが、ウチの奥さんの話では「少女漫画でラブコメって言葉を聞いた記憶は無いなあ。だってラブコメディーは王道だから。」とのこと。そりゃそうか。

一方、今は知らないけど当時の少年漫画はそれはそれは自由な世界だったため、何でもありでムーブメントが起こりやすかった。スポ根とか、恐怖漫画だとか、下ネタギャグマンガだとか...で、一つの大ヒット作が登場すると亜流がいくつも沸いてでる。
で、そこに恋愛なくても読者は満足。まあガキだからね(笑)。

ところが、コロコロコミックといった小学生向けにターゲットを絞った漫画雑誌の登場で、少年誌の読者の中心が小学生から中高生に移り始めたこと、さらにヤング誌の創刊。この二つの出来事で変化が生じます。
男女関係をテーマ・サブテーマ化、あるいはフォーマット化した作品が徐々に増え始め、その中でも軟派な作品群をラブコメ一括りにしはじめた。

初期パターンを分類すると、概ね3タイプに分類できるかな。

A群:少女漫画からのフィードバック
少女マンガを書いていた男性作家が、そのエッセンスを少年漫画でいかんなく発揮し、成功を収めた...という流れ。
代表的作家は、あだち充かな。
陽あたり良好!」(週刊少女コミック)〜「みゆき」(少年ビッグコミック)という流れは「オタク的受容の歴史と変遷」に書かれている内容に近い。
ちなみに、あだち充は突然そんな漫画を描きだした訳じゃなくて、中一コースで連載されていた比較的初期の作品において、既にその片鱗をみせていた記憶があります。
私は作品名は覚えておらず(多分この中のどれか(苦笑))、それも初回しか見ていなかったのですが(笑)、確か、初めての出会いで互いの裸を見られてしまうというエピソードから始まっていた記憶があります。今からすると王道過ぎるパターンですけど、当時は新鮮でしたね。
中学生向けの学習誌ですから、男女とも読めて、思春期の世代を対象とした作品であることが必要。また原作が付いていたことで、作家よりも編集部の(ある種の性教育的な)思惑も色濃く出ていたかもしれないのですが、彼のキャリアの比較的初期に、このような作品を経験したことが大きかったのではないかと思います。
また、ストーリー性を重視し、恋愛に至るプロセスを大切にすることが特徴です。性的表現は露骨ではなく、またギャクやコメディにはとらわれないところも特徴。

B群:恋愛凸凹ギャグマンガの発展系
恋愛ギャグマンガ系作家のブレイク。
狭義のラブコメはこれですね。
元祖は柳沢きみおかな。
柳沢きみおは、ラブコメブーム以前から週刊少年ジャンプ週刊少年チャンピオンで人気作家でしたので、少女漫画とはあまり縁が無かった様ですね。
当時の作風は「恋愛プロセス抜きの恋愛モノ」というか、ちょっとお色気をいれた凸凹恋愛ギャグマンガというか、背が小さいなどのコンプレックスをもっている主人公には何故か彼女がおり、それもスタイル抜群で可愛いというおまけ付き...みたいなスタイル。
特に「恋愛プロセス抜き」が重要で、これは一話完結のギャグマンガだったこともあり、恋愛に至るまでのプロセスに重きを置かず、相思相愛が前提で進行しておりました。
本家の柳沢きみおは「翔んだカップル」で突然シリアス路線へ転向したため、他のマガジン系作家に、そのエッセンスが引継がれていくことになる...のかな。
この方面でありがちな設定は「転校生は幼馴染みでびっくりするくらい可愛くなっていた。ちっちゃい頃に結婚しようねって約束していたから、彼女も未だにその気だ。」みたいな感じ。
ギャグ中心の作品はインタラクティブ感があるので面白いのですが、どちらかというと女性のタイプが単純明快になりがちで、一つ間違えると性的欲求を満たす方面に行きがちになるのもこのパターンの特徴。かつての月刊少年漫画誌にみられた巨乳モノとかもこの発展形でしょうね。

C群:一般向け作品の美少女化
美少女が比較的多く登場するが、あくまでも王道の少年漫画の世界を守っているパターン。
高橋留美子江口寿史、それと細野不二彦がそうですね。
基本的に少年漫画のフォーマットから外れていないので、当時はラブコメとは呼ばれていませんでした。いや、今でもそうでしょうが、このジャンルににこの系統の作品が含まれている場合が多いので、一応、挙げておきます。
このコンセプトのルーツは「ど根性ガエル」かなあ(苦笑)。登場する女の子が可愛かったり美人教師だったりするけど、ギャグのネタとしてはその部分に限定されない幅広さがある。
なので性的な表現は薄い傾向があり、なおかつライトで中性的なので女性読者からも人気があった。テレビアニメ化しやすいしね。

...まあ、こんなところかな。
私はもう15年ほど前から漫画を読まなくなってしまったんだけど、最近のトレンドはどのタイプの発展形なのかなあ。
それと、「萌え」って感覚はA群・B群よりC群なのかなあって気がします。

ここら辺りを、その筋の専門家がまとめると結構価値ある資料となりそうですけどね。
どうなんだろ(苦笑)。